詩作「ともだち妄想」(人魚君遺作、改題済み)

 

詩作

 

ともだち妄想

 

モラトリアム人魚

 

後ろに目を遣る 遠くに君がいる
君は僕を見る 僕は呼んだ
剣呑さえも ただ純粋だった
見下す君は なおざりに答えていた

筆を手に僕は 君に近づいた
僕は君を見たんだ 夢を見たんだ
奇麗なものを書きたいと思ったんだ
その電車に僕は やっと乗り込んだ

君と見た夕暮れは 何よりも儚かった
僕の細い指は 君の体をなぞった
あの時こころには こだましたのか
僕と君は 友達なのか

そうなのわたしは 気づいてしまったの
わたしが求めていたのは これだったの
あのときの聲は 全部うそなの
おねがい あと少し 声を聞かせて

夕間暮れ 光 一條
花が咲いたのは 散るためでした 
僕はこれを 求めていたのか
おねがい もう一度 声を聞かせて

僕が 君をあんなにした
良心はいつも やさしさではない
一人では 生きられない
去り際の僕は 間抜けだったろう

もう僕は 君といられない
君だけでも 生きてくれ
生きるとは あることだ
耐えるのは 手段じゃない

ああ どうして 出会うの
ああ どうして 失うの
終わりの日に 光に祈る
あの光は 僕のじゃない

骨を削って 火を焚いた
誰の 何とも知らず
今 あるために ただ燃ゆれど
人のものは 僕のじゃない

かつての友よ 今いずこ
いるはずなのに はたしてない
悠久の川 下って至るに世界
ここは どこなのだろうか

戻した 戻りたいと願って
また戻した また願って
遂に たちどころにたおれる
君を待つ 折しも春

愛 それは君
潤い それが君
両つあり たまさか僕はいた
春霞 君を 遠くにまぼる

青桜を偲んで 人の波に感じ入る
君も僕も誰も 判らない悠久
難しいことは 何もいらない
委ねるを思い 空を仰ぐ

暗転 のち星空 永と今日
未だ人魚は 潮垂れて祈る
線条の水平に 好日を想って
僕は君さえも 独りよがりに